身体

なぜ指揮をすると、腕、肩、首が痛くなるのか?

指揮をする機会がある人は、
腕や肩や首が痛くなるという悩みをお持ちの方も
いらっしゃると思います。

わたし自身、
職業病では済まされないほど、
肩が痛くてどうしようもない時期がありました。

なぜ痛くなるのかを、指揮の技術ではなく
解剖学を用いてお話していきます。

腕や肩が痛くなるのはなぜか?

腕は胴体にぶら下がっています。
その腕を空中で上げたり、下げたり、
様々に動かしているのであれば、
腕の重さ、動いているスピードや方向が
身体に影響を及ぼします。


あなたは、
腕の重さや、腕の長さ、腕が始まる場所を
考えたことがありますか?

それを知ることによって、
腕への価値観が変化するかもしれません。

はじめに、腕の重さをお伝えします。

腕の重さはどれくらいか?

片腕の重さは、体重の6%くらいと言われています。

体重が50キロの人なら、約3キロ
体重が60キロの人なら、約3.6キロ
片腕は、約3-4キロあります。

この重さがある腕を、
一曲の中で、何千回も
欲しい音を作り出すために、
様々な動かし方をするのですから、
当然身体に負荷がかかっています。

腕の重さ、加速や減速の衝撃を、
身体に受けているといえるでしょう。

また、腕を振っていると同時に、
首はピタッと止まっていることはありません。
自ずと、連動して動いています。

首の上に頭がのっていますが、
今度は、頭の重さを考えてみましょう。

頭の重さはどれくらいか?

成人の頭の重さは、体重の10%くらいと言われています。

体重が50キロの人なら、約5キロ
体重が60キロの人なら、約6キロ
頭は、約4-6キロです。

この重さを、
首、肩、背中の骨と筋肉が支えています。

頭の下にあるのは、首ですから、
負荷がかかっていることは、一目瞭然です。

指揮者の職業病に、
・むち打ち
・頸椎損傷
・頸椎ヘルニア
・頸椎靭帯骨化症
といった、頸椎(首の骨)にまつわるものが多いのは、
腕や頭を動く衝撃を、
頸椎が一番受けるからでしょう。

両腕の重さ、約6-8キロ
頭の重さ、約4-6キロ
を、様々な方向に動かしているということは、
それ以上の重さがかかっていることになります。


その衝撃を、少しでも和らげるためにも、
解剖学で言われている腕の長さをお伝えします。

腕はどこから始まるか(長さ)?

腕が始まると考えている場所を、
触ってみてください。

あなたが今、手を置いている場所は、
「肩」ではないでしょうか?

一般的に、腕は肩から始まる
という認識である方が多いと思います。

質問を変えてみます。
腕の骨の付け根はどこから始まるでしょうか?

どこに手を添えているでしょうか?

解剖学的には、
腕の骨の付け根は、
鎖骨と胸椎が出会う場所、
胸鎖関節(ネクタイの結び目あたり)です。

そして、肩甲骨も腕に含まれています。

下記の指先まで塗られている部分が、
腕全体の骨です。

肩からと思っていた方にとっては、
腕は鎖骨分(20センチ位)長くなったことになります。

これを知って、あなたは何を感じますか?
驚きませんか?

これを知ると、
中心から外れた場所から、
腕を動かせば動かすほど、
身体に負荷がかかることが分かるでしょう。


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これらのことだけが痛くなる要因ではないですが、
解剖学的に考えられることとして、
腕、頭の重さ、腕の長さ・始まる場所をお話しました。

身体を守るためにも、
腕や頭の重さは変えられないので、
ぜひ腕の始まる場所を意識してみてください。