この記事を読むと、
音楽家がアレクサンダー・テクニークを取り入れたことで、
身体にどのような変化が起きるのかが分かります。
身体と丁寧に向き合えるようになった
自分の腕に信頼が置けるようになった
アレクサンダー・テクニークに出会う前は、
指揮者であるわたしは、
共演者、お客様に丁寧に接しようと
意識が外に向かうことが常でした。
共演者が演奏しやすいようにしつつ
音楽を前に進める役割、
という風に指揮者の仕事を
捉えていたとも言えます。
当時は、
『指揮をしている時の自分の身体』
なんていうことは考えたことも
ありませんでした。
しかし、指揮ができるのは
自分の身体というものがあってこそのなのだ
と理解したのです。
すると徐々に、
指揮をしている自分のこと、
つまり、
自分の外側にしか向いていなかった矢印が、
同時に自分にも向けられるようになりました。
イメージと事実の間には認識のズレがある
指揮、と一口に言っても、
多くの動きがありますし、
その動きはまた多くの動きの掛け合わせで
成り立っています。
指揮に変化をもたらしたのことの中で
特に大きかったことは
『ボディマッピング』です。
ボディマッピングというのは、
身体の地図を把握することです。
例えば、そもそも腕はどのように動くのか?
という事実を知ることができます。
そもそも動かそうとしていたところが
実際にはその動きが出来ない場所だった、
ということもありますし、
さらに、
こんな動きもできるということを知ったことで、
可動域が増す、ということも起こります。
つまり、
自分の中で描いているイメージと、
実際の身体の地図との間には、
ズレがあることが分かりました。
ズレの訓練
こうして発見した
イメージと地図のズレを、
解剖学的な知識をもとに
修正していきます。
身体に方向性を出して、動かす訓練をする、
ということです。
具体的にどのような内容か
【腕】を例に見てみましょう。
__________________
①腕は肩から動かすものだと思っていた
↓
【が、実際には腕は肩甲骨と鎖骨と
密接に連動していることが
地図を確認して分かったので】
↓
②腕に肩甲骨と鎖骨も含めて動かしてみる
↓
③動かしやすくなり、伝わりやすくもなった
(結果が変化した)
__________________
というものです。
さらに、
この体験を一回しただけでは
習慣を変えることは難しいため
時間をかけて、繰り返し行い、
これまでの習慣を変えていきました。
これによって、
これまで指揮の動きは
無意識でやっていた部分が
多かった
ということ
自体に気付きました。
〝身体に任せる〟指揮
ボディマッピングを知れば知るほど
『わたしは今、腕を〝正しく〟動かしているのか?』
と正解を求めていました。
しかし、
ボディマッピングによって事実を知ることで、
身体はその時最善の動きをしてくれようとするのだ、
という方向へ、思考も変化したのです。
ここから動かそうとしているから
〝よろしくね、わたしの腕!〟
と思えるようになり、
さらに実際に動いてくれたらありがたい、と
〝身体に任せる〟指揮ができるようになりました。
これは本当に大きな変化で、願っていたことです。
周りの反応が変わった
指揮が変わったことで
周りの反応が変わりました。
それで〝アレクサンダー・テクニークは指揮を変える〟
と実感できた、とも言えます。
・見ていて気持ち良かった
・オーラが大きくなった
・雰囲気が変わった
・腕の動きが綺麗!
などの感想をいただくようになりました。
プロの声楽家などの共演者からの
フィードバックの他にも、
アレクサンダー・テクニークを知らない方、
アレクサンダー・テクニークを
学んでいることを知らないお客様もどちらもいます。
さらに、お客様は、ほとんどが
指揮者の背中を見ています。
その中でも変化に気付いて
フィードバックしてくださる方が
多くいました。
まとめ
身体、
というキーワードが入ってきてから、
向き合うことの概念自体も
変わりました。
身体、というのは全体のこと。
腰が痛い、腕に違和感がある、
というのは、部分のこと。
このように、
身体の捉え方が部分から全体へと
変化しました。
部分だけだったものが全体の中の部分、
と変化したことで
例え違和感や痛みが生まれても
捉え方が変わっているので、
自分を責めることが格段に減りました。
それと同時に、
ひとりの人間としての個も捉え方が
変わりました。
ひとりの人間として、
指揮も、日常生活も、
それからさまざまな配役がありますが
それらの輪郭がぼやけたことで
ひいては生きやすくなりました。